2022年3月31日木曜日

ウクライナの核関連施設への攻撃に思う

 ウクライナの物理学研究所(ハリコフ物理・工学研究所)は、ロシアからの軍事攻撃を受けたことで、一躍名を知られることになりました。

 この研究所の正式名称は英文表記ではKharikiv Institute of Physics and TechnologyKIPT)です。その歴史は古く、ソ連時代の1920年代末に遡ります。かれこれ、100年近い、長い伝統をもつ施設です。 主な研究テーマは,核物理学(原子物理学)と固体物理学とされています。1932年には核分裂実験にも成功しています。

Wikipediaで紹介されている写真には、ソ連で最も名高い物理学者の一人で、ノーベル物理学賞受賞者であるランダウの姿も見えます。ランダウは、このハリコフ時代に、リフシッツとの共著で有名な「理論物理学教程叢書」を執筆しています。この研究所が、旧ソ連時代の物理学研究のシンボルのひとつであったことは、間違いありません。

ランダウ(左から3人目)1932年~37年に研究所の理論物理部長を務めた

 ロシアが、旧ソ連の正統な“後継者”を自任しているとすれば、この研究所を自らの分身と考えたとしても、怪しむには足りません。ロシアがこうした核関連施設を接収の目標に考えることは、ある意味当然かもしれません。(ウクライナの核兵器開発の証拠をフレームアップするため、という説も取り沙汰されていますが…)

 とはいえ、接収を目的とすることと、軍事的な標的にすることとの間には、大きな隔たりがあるはずです。核施設をめぐるロシアの軍事行動は、場当たり的で、無計画的と考えざるをえません。核災害の被害の深刻さは、ウクライナや隣国ヴェラルーシの人々のよく知るところですが、ロシアでは、このことが十分共有されていないのかもしれません。この点も、大変憂慮されます。

 

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