本ブログでも、綿貫さんのお書きになった「現代化学」2011年5月号の記事(「放射能汚染が未来の世代に及ぼす影響」)の一部を紹介したことがありましたが、(http://kyoto-sien.blogspot.com/2011/06/blog-post_28.html ) その綿貫さんが、今年の1月30日にお亡くなりになりました。綿貫さんといえば、休刊して久しい月刊誌「技術と人間」の常連の執筆者であり、その著述から、私も多くのことがらに目を開かされました。
綿貫さんは、国家や巨大企業と結びついた現代の科学・技術を、批判的に考察する立場から、サイエンスライターとして、多くの著作を残されました。綿貫さんは、薬学・生化学がご専門でしたが、そうした枠組みにとらわれることなく、水俣やチェルノブイリ、ベトナム(枯葉剤による被害)、ボパール(インドで起きた20世紀最大の化学工場爆発事故)など、常に被害者の立場に立って、多岐にわたるお仕事をされました。
先にご紹介した「現代化学」2011年5月号のなかで、綿貫さんは、今回の福島原発事故を受けて、いままでの「原子力推進あるいは反対と言ってきた問題が、まさに根底からひっくり返ろうとして」いる、という鋭い指摘をされていたことが、心に残っています。
綿貫さんの、私たちへの最後のメッセージが、この3月、「放射能汚染が未来世代に及ぼすもの」というタイトルで上梓されました。(新評論刊 1800円)綿貫さんの卓見のひとつに、放射能の健康に対する影響を、ガンの発生の有無だけに局限・矮小化するのは誤りだ、とする考えがあります。低線量の被ばくが原因で、子どもたちの全般的な健康悪化が起こりうる、ということをいち早く指摘した功績は大きいと言えるでしょう。科学・技術のもつ征服的・男性的側面をフェミニズムの立場から批判する視座を確立したことも、特記されるべきことでしょう。
綿貫さんのお仕事については、いずれまた、稿を改めて、ご紹介するつもりです。(滝澤)
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