このブログでガレキ問題について言及することには、今までよく言えば慎重、悪く言えば尻ごみをしていました。しかしながら、宮城県石巻市や山元町で、実際に膨大なガレキの山を目撃して以来、この問題の深刻さから、目をそむけることは許されない、との思いも強くしています。ガレキ受け入れ拒否が絶対的正義である、と信じている人たちとは、残念ながら私は見解を異にしています。しかし、自分の考えを人に押し付けよう、という気持ちも、さらさらありません。さりながら、この問題は、被災地だけの問題、ととらえずに、私たちの帰属する社会全体の問題、私たち自身の問題、ととらえることこそが、問題にアプローチする、正しい姿勢である、と信ずるところです。
政府批判と並んで、マスコミ批判も厳しい昨今ですが、NHKの報道番組をひとつの手掛かりに、この問題をわがこととして真剣に考えることが肝要かと思います。
私は、今から20年ほど前、東京湾の13号埋立地というところ(今は、おしゃれなウォーターフロント、「お台場」と呼ばれている)で、埋立地の埋め立て土圧(どあつ)による堤防への影響を調べる、測量の仕事を半年ほどしていたことがあります(東京都の下請け、そのときは天文学者ではありませんが、毎日望遠鏡~測距儀~を覗いていたわけです。むしろ、今はデジタルデータしか扱わないので、この頃の方が、よく望遠鏡を使っていたかも)。そこには、連日、生活ゴミや産業廃棄物の山が運び込まれ、日々異臭や粉じんに悩まされました。廃棄物の山には、あちこちに鉄パイプが、突き刺さっていて、ゴミの中から発生するメタンガスのガス抜きをしていました。パイプの先からは炎が立っています(火災や爆発を防ぐためにわざと燃焼させていたものと思われる)。その光景たるや、この世の終わりのような、名状しがたいあり様でした。このような埋立地には、もちろん有害な物質が濃縮され、蓄積されていることは間違いありません。
大量採掘、大量生産、大量流通、大量消費、そして大量廃棄という現代の産業社会の真のバックエンドの姿を目撃したわけです。
私たちは、日々の生活にかまけて、自分たちの社会の生み出す廃棄物の問題と向き合う、ということがほとんどありません。震災ガレキは、もちろん、通常の廃棄物の問題とは位相を異にする面も大きいですが、いったん廃棄物に姿を変えてしまえば、その処理処分の問題は、従来の廃棄物処理の問題と相通ずる面が大きいはずです。
「有害な廃棄物」と問題を捉え返せば、それは、震災ガレキの問題にとどまらないはずです(もっとも、宮城や岩手の震災ガレキが、本当に深刻な放射能汚染をされているか、ということも、ちゃんと検証すべき課題ですが)。自分たちが日々大量に生みだして顧みない、有害な廃棄物には一切無頓着なのに、「震災廃棄物」だけをことさら問題にする姿勢や態度には、私は残念ながら、強い違和感を感じざるを得ません。(広域処理は危険だから絶対反対、そのかわりに地元で処理すれば雇用が生まれる、などといった主張には、被災地・被災者への侮辱、倫理的退廃しか感じません)
政府やマスコミを批判すること(すべて政府やマスコミが悪い)は容易ですが、これは、ある種、かつての「一億総ざんげ」といった責任をうやむやにした姿勢と対極の、自分には一切責任がない、かのような、安易な思考停止につながる危険がないとはいえません。
ともあれ、7月7日のNHKのガレキ問題の特集に注目しましょう。
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0707/
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シリーズ東日本大震災
がれき "2000万トン"の衝撃
2012年7月7日(土) 午後9時00分~9時49分
東日本大震災で発生したがれきは、東北3県の沿岸部だけでも1880万トン。これは阪神・淡路大震災を超え、過去最大級とも言える膨大な量である。そのう ち、今年5月までに処理が終わったのは2割に満たない。今も、被災地には高さ20メートルものがれきの山が残ったままで、震災から3年以内に全ての処理を 終えるとしている国の目標に黄信号がともっている。
国は焼却や埋め立てを全国の自治体に依頼する「広域処理」を進めようとしているが、焼却施設や処分場の不足、そして放射能の影響を懸念する地元住民の反対もあって、難航。さらに、ここに来て、行き場のない不燃性のがれきの処理が新たな問題として浮上。
一方、津波で海上に流出し、太平洋を巡ったがれきが、北米に続々と漂着。その処理をめぐって、国際問題に発展する懸念も出始めている。
空前の津波で発生した膨大ながれき。震災から1年以上経ってなお、数々の問題を引き起こし続けるがれきの行方を追う。
河北新報6月22日の記事を見てください。
返信削除http://p.twpl.jp/show/orig/SXcR2
東日本大震災で発生したがれきを 防潮堤に活用する構想を進める県議会の「いのちを守る森の防潮堤」推進議員連盟と県の意見交換会で、がれきを防潮堤に活用する構想を進める県議側が、国と県の進めるがれき広域処理にも批判をしているとのことです。被災者とそれ以外の人間を対立的に捉えることには、異議があります。