2011年11月22日火曜日

野イチゴ、木イチゴ、野生のベリー類やキノコに
特に注意を!~チェルノブイリの教え~


 岩波書店「科学」11月号は、“チェルノブイリの教え”というタイトルで、チェルノブイリ事故の影響評価に関する特集号になっています。福島原発事故に関心を寄せる人にとって、必携・必読です。

 今回も、著作権の問題を顧みず(ごめんなさい!)、このなかから、鷲谷いづみさんの「原子力災害が野生生物と生態系にもたらす影響と人々」という記事の一部を引用して、ご紹介します。13節からなる本文から、1節のみの引用です。全文をお読みになりたい方は、ぜひ「科学」11月号をお手にお取り下さい。(元の文章にある植物種の学名は煩雑なので、引用者の判断で省略してあります)

http://www.iwanami.co.jp/kagaku/KaMo201111.html

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野生のベリー類やキノコの汚染

 野生のベリー類の放射性セシウム(Cs-137)による汚染も顕著であった。地域の人々によって森や湿地の恵みとして採集利用されるビルベリー、ブルーベリー、コケモモ(いずれもツツジ科スノキ属)、野生のイチゴ、キイチゴ類などの汚染が特に注目された。ビルベリーとコケモモにおける蓄積量が大きく、ビルベリーで74、コケモモでは67というTR引用者註1)が報告されている。また結実期には放射能が果実に濃縮されるという測定例も報じられた。

人々が採集利用するキノコ類の汚染も多く報告された。子実体(いわゆるキノコのこと…引用者)のCs-137比活性引用者註2)と土壌の汚染度との間には相関が認められ、同じ種類のキノコでも土壌の汚染度に応じてCs-137濃度の測定値に500倍以上の違いが認められた例もある。ウグイスチャチチタケ、ナラタケ、ニセイロガワリの子実体のCs-137比活性(引用者註2)が土壌の汚染度に対して、指数関数的に増大したとする報告もある。

菌類は菌糸を広く張り巡らしてミネラルを吸収する。放射性セシウムはその化学的性質が植物の三大栄養素の一つであるカリウムと似ている。栄養の乏しい樹林やツンドラでは、菌糸は広い面積から他のミネラルとともに放射性セシウムを集めて子実体に貯める。

なお、キノコの広域にわたる汚染は、チェルノブイリから相当遠く離れた地域からも報告された。局所的汚染地域(ホットスポット)の森林でのキノコの汚染の著しいこと、チェルノブイリから1000㎞も離れたフランスの山岳地帯において、キノコ類を常食するイノシシにきわめて高い汚染が認められた例などがある。

樹木と共生する菌類、菌根菌は、集めた放射性セシウムをカリウムと同じように共生する樹木に供給する。それが葉に移行し、やがては落ち葉になり土にもどる。キノコを餌にする動物の排泄物や遺体に濃縮された放射性セシウムは局所的に土壌を高度に汚染する。このようにして土壌に戻った放射性セシウムを再びキノコ類の菌糸が吸収する。いったん土壌の汚染が起こると、食物連鎖、腐生連鎖、および共生関係などを通じて、生物全般に厄介な放射性物質の生態系における循環が始まる。

 ノルウェイやポーランドなどの高緯度地方では、Cs-137による地衣類(菌類と藻類の共生体)の汚染が特の顕著であった。

引用者註1:TR値とは、(ベクレル/kg 植物バイオマス)/(キロベクレル/㎡ 土地面積)と定義される値。要するに、1平方メートル当たりの放射能汚染が、植物にどれほど影響を与えているかを捉える、ひとつの目安である。

引用者註2:鷲谷さんは、比活性(specific activity)という言葉を用いていますが、これはおそらく、比放射能(specific radioactivity)の誤解ではないでしょうか。比活性は主に化学(あるいは生化学)の世界で使われる言葉で、この問題にふさわしい使われ方ではないように思われます。これを比放射能、すなわち単位質量当たりの放射能の強さ(たとえば、ベクレル/kg)と考えると、前後の文脈からすんなり理解できます。

 

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