2014年3月24日月曜日

袴田事件と”社会正義”と

 みなさま、ご無沙汰しております。
 冤罪事件の代名詞ともいえる「袴田事件」の再審開始の是非が、この27日に静岡地裁で下されます。
http://www.h3.dion.ne.jp/~hakamada/jiken.html
 日本には、はたして「社会正義」はあるのか、日本の司法には「正義」はあるのか。まさしく、「審判の日」です。
 昨年の冬から今年にかけて、袴田事件の第二次再審請求を求める市民集会が、静岡県の浜松市と静岡市であいついで開かれ、私も行ってまいりました。
 浜松市での集会は、50名たらずのこじんまりとした集まりでしたが、袴田さんのお姉さんの肉声に接する貴重な機会になりました。1月13日の静岡の集会には全国から300名あまりの参加者があり、お姉さんも、「こんなに支援者が集まったのは初めて」とおっしゃっていました。
 私は、この事件のことは30年ほども前から知っていましたし、裁判に疑問も抱いていましたが、袴田さんやそのご家族の苦衷に思いを致せず、最近まで何の支援もできずにきました。たいへんに申し訳ないことです。
 昨年の暮れ、世の中は、「秘密保護法」制定をめぐって、議論がかまびすしかったところですが、50年近くも司法権力の、まさしく”秘密保護法的”体質によって、冤罪に苦しめられてきた袴田さんのことに、関心を払う人が少なかったことは残念なことです。(自分たちの近くで原発事故が起きたら、たいへんなことになる、とか、日本が戦争に巻き込まれたら、たいへんなことになる、という世間の論調に長く付き合わされてきましたが、なぜ、私たちは、すでに原発事故で苦しんでいる人や、
戦争に苦しんでいる人、さらには冤罪に苦しんでいる人に寄り添うことができないのでしょうか。自戒を込めて思うところです)
 
 フランク・キャプラは、映画「オペラハット」のなかで、主人公(ゲーリー・クーパー)に次のように言わせています。 心に残るセリフです。

「それはちょうど、私は大きな船のデッキにいて、
見ると、小舟に乗っているひとと溺れている人がいる。
小舟の人は漕ぐのが疲れたので、誰かに漕いでほしいと思ってるだけだ。
私はどちらを助けるべきと皆さんは思われますか?
誰かに自分の小舟を漕いでもらいたいシーダー氏ですか?
それとも海のなかでおぼれている人たちですか?
10歳の子供でも答えられるでしょう。」

 私は、大きな船どころか、笹船の端につかまり、自分自身がおぼれそうな有様です。
しかし、おぼれている人がいれば助けなければならない。救助には、順序が大切です。

 昨年の暮れに、私が、袴田事件の再審請求署名を会のメーリングリストでお願いしたことに、唐突な印象をもった人もいたでしょう。しかし、社会の虚偽と横暴にもっとも苦しめられている人に関心を向けることが、おそらく、日本の民主主義のためにもいちばん大切なことではないでしょうか。
 大見得を切ってもできることは限りなくささやかですが、「順序」を大事にしながら、少しでも「社会正義」と向き合いたい、と念じています。(もちろん、被災地でいまだに仮設住宅で暮らしている人たちのことも、忘れるわけにはいきません)

 (滝澤)

 

1 件のコメント:

  1. 再審開始を支持する信濃毎日新聞社 社説
    http://www.shinmai.co.jp/news/20140325/KT140324ETI090003000.php

    袴田事件 認定事実は本当なのか 03月25日(火)

     強盗殺人罪などで死刑判決を受けた袴田巌死刑囚の第2次再審請求審で、静岡地裁が27日、再審を認めるかどうかの決定を出す。

     1980年の死刑確定から34年。時がたつにつれ、認定された事実への疑いが濃くなる。ためらわず再審開始を決め、証拠を検証し直すべきだ。

     事件は66年、静岡県清水市(現静岡市)で起きた。みそ製造会社専務宅の焼け跡から一家4人の遺体が見つかり、住み込み従業員だった死刑囚が逮捕された。

     第2次再審請求は08年、認知症の疑いがある死刑囚に代わり、姉が申し立てた。犯行時に着ていたとされる「5点の衣類」に付いた血痕が焦点になっている。

     シャツの右肩に付着した血痕が死刑囚のものとされ、有罪の決め手になった。2次請求審では、検察側と弁護側が推薦した専門家があらためてDNA鑑定を行い、いずれも「死刑囚のDNA型とは違う」との結果を出している。

     弁護団はこれを明白な新証拠に挙げる。検察は「鑑定試料は経年劣化しており、結果は信用できない」と主張する。

     検察が初めて開示した証拠からも疑問点が浮かぶ。例えば、被害者宅の敷地で見つかった裏木戸の掛け金。死刑囚の自白を裏付ける物証とされたが、見つかった3日前に発見場所を撮った写真のネガには写っていなかった。検察は事件前後の死刑囚のアリバイはないとしてきたのに、同僚が事件直後に社員寮の近くで目撃していたことも分かった。

     一審を担当した元裁判官が、他の裁判官との評議で無罪を主張したことを明かし、地裁に再審開始を陳情している。公判で「死刑囚の顔に見覚えがある」と証言した女性は、共同通信の取材に「本当は見覚えがなかった」と告白した。重要な関係者のこうした言動も見過ごせない。

     「5点の衣類」は事件から1年余りも過ぎてから、既に捜索したはずのみそタンク内から見つかった。ズボンのサイズは小さく、死刑囚は着ることができなかった。一審に提出された自白調書44通は任意性を疑われ、証拠から排除された経緯もある。

     認定された証拠に数々の疑義が生じている以上、再審の場で真偽をはっきりさせるほかない。

     袴田死刑囚は66年の初公判から一貫して無罪を訴えている。78歳になり、体調が心配されている。静岡地裁は「疑わしきは被告人の利益に」の原点に立ち、再審の扉を開いてほしい。

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